
長谷川氏の講演の様子
木更津工業高等専門学校(千葉県木更津市、校長:先村 律雄、以下「木更津高専」)では、令和7年10月24日(金)、株式会社ラック(本社:東京都千代田区)より講師をお招きし、「実務者が語るサイバーセキュリティ業務」と題した特別講義を開催しました。本講義では、警察庁やインターポールとの連携、IoTやAI、オンラインゲームまで広がるセキュリティ領域、そして現場で活躍する高専卒エンジニアのキャリアについて、具体的な事例を交えながら紹介しました。
講義の前半では、株式会社ラック サイバー・グリッド・ジャパン 主席研究員の長谷川長一氏が登壇し、同社が取り組む産学官連携や国際的な活動について詳しく説明しました。同社は、日本サイバー犯罪対策センター(JC3)に2017年から参画し、警察庁と連携してサイバー犯罪対策を推進しています。また、国際警察機構インターポールのデジタル犯罪対策センター(シンガポール)にも2015年から協力し、監視システムのエンジン提供などを行っています。さらに、Microsoftとの共同リリースによる海外詐欺組織摘発など、国際的な取り組みも進めています。
長谷川氏は、セキュリティの対象がコンピューターからネットワーク、クラウド、IoT、ロボット、暗号資産、そしてAIへと広がっている現状を解説しました。こうした変化に対応するため、同社ではSOC運用(J-SOC)、インシデントレスポンス(サイバー119)、脅威インテリジェンス、ペネトレーションテスト(TLPT)、IoTや制御系診断、オンラインゲーム検査、さらに生成AIのセキュリティ検査など、多様な業務を展開しています。「高専生の実践力は、IoTやロボット、AIなど新領域で特に求められています。ぜひ積極的に挑戦してください」と長谷川氏は学生に呼びかけました。
後半では、株式会社ラック コンサルティング統括部 CECIDフォレンジックサービスGの前田恭耶氏(高知高専卒)が登壇し、現場での業務内容を紹介しました。前田氏は、インシデントレスポンスやデジタルフォレンジック業務を担当し、サイバー攻撃の初動対応、証拠保全、調査解析などを行っています。「興味・関心・適性を軸にキャリアを選び、積極的に挑戦してください」と学生にメッセージを送りました。

前田氏のオンライン講演
長谷川氏の質疑応答
講義後には質疑応答が行われ、学生から現場のリアルに関する質問が寄せられました。「サイバー救急センターへの相談頻度は?」という質問に対し、前田氏は「1日数件程度で、休日や年末年始にも対応があります」と回答しました。また、「警察と企業のフォレンジックの違いは?」という質問には、「警察は立件目的、企業は原因究明と復旧対応が目的です」と説明し、長谷川氏も「警察は復旧や再発防止は行わず、民間はビジネス継続のため復旧と再発防止策を提案します」と補足しました。さらに、資格取得の勉強法については「Hack The BoxやTryHackMeなどのオンライン学習サービス、CTF(Capture The Flag)への参加が有効です」とアドバイスしました。
最後に、講師陣から「高専生ならではの強みを活かし、コンテストやイベントに積極的に参加してほしい。長期的なキャリア形成には興味・関心・適性が重要です」とのメッセージが送られ、講義は終了しました。
