今年4月末で創業100年の歴史に幕を下ろし、解体・撤去された「玉川旅館」(船橋市湊町2)の記録映像と360度VR画像が12月1日、インターネット上で公開された。
玉川旅館は1921(大正10)年に創業。太宰治ゆかりの宿として広く知られ、大人数での宴会や合宿ができる場所としても市民ら幅広い人たちに親しまれてきた。
近年の宴会需要の落ち込みや老朽化に伴う木造建築の維持管理コスト増に加え、新型コロナウイルス感染拡大による客足の落ち込みにより、4月末で創業100年の歴史に幕を下ろした。
同館から船橋市に営業終了と6月の解体予定の申し入れがあったのは4月中旬。船橋市としても「貴重な文化財である玉川旅館の歴史を末永く後世に伝えていきたい」と、映像記録を公開することにした。今回公開された映像記録のほか、建築物の専門家による調査・図面作成、報告書の作成、一部部材の寄贈受入など、約600万円の費用を投じて、記録および保存が急遽進められることになった。
撮影には360度カメラやドローンなど先端機材も用いられ、5月18日から26日のうち6日間で実施された。船橋市文化課によると「玉川旅館の解体を惜しむ市民もたくさん訪れる中、天気や時間帯などさまざまな場面の玉川旅館の姿を撮影するのに苦労した」という。
記録映像のダイジェスト版は11月中旬に既に公開されたが、今回はそれに続く形で「玉川旅館物語 本編」(約9分30秒)と「玉川旅館物語 資料編」(約16分30秒)の2本の動画と、館内約90カ所を実際に訪れたかのように見られる「360度VR画像」が公開された。いずれも船橋市の特設ホームページから閲覧可能。
同館の跡地には14階建てマンションの建設が発表され、工事が始められている。