ドキュメンタリー写真家・北井一夫さんの写真展「フナバシストーリー北井一夫」が12月6日、市民ギャラリー(船橋市本町2)で始まり、市民の普段の生活の姿をまとめた「フナバシストーリー」など177点を展示している。
京成船橋駅前の居酒屋の風景=北井一夫さん写真展「フナバシストーリー」
北井さんは、成田空港建設に反対する地元農民を撮影した「三里塚」で1972(昭和47)年、日本写真協会新人賞を受賞。1970年代の日本の農村をカメラに収めた「村へ」で、1976(昭和51)年に木村伊兵衛賞を受賞した。「船橋市写真展」では初回から44年間、審査員を務めている。
今回の展示の中心「フナバシストーリー」は、市内古作に住んでいた北井さんが1983(昭和XX)年から1987(昭和XX)年にかけて撮影した写真を並べる。急速に人口が増えていた当時、「新しい住人の普段の様子を撮影してほしい」という市からの依頼を受け、団地の台所に立つ主婦、居間でくつろぐ家族、船橋駅の通勤ラッシュ、リーゼントの若者たち、駅前の居酒屋など、市民の普段の生活をカメラで捉えた。会場には北井さんの声を収めたビデオも上映しており、その中で北井さんは「自分の身近なものを見つめるのは一番大事なこと」と話している。
船橋市教育委員会学芸員の益子実華さんは「当時の船橋はギャンブルや遊興地のイメージが強かった。明るいイメージをもってもらい、住みやすさをPRする意図もあった」と振り返る。
今回の展示会を知り、作品として撮影された当時の団地の住人が同会場を訪れ、北井さんと再会できた人や、来場者が写真を見て「この人知ってる」と懐かしさに涙する姿も見られたという。
会場では市内小中学生が授業の中で日常を撮影した「私の船橋ストーリー」も同時開催。同展示は、「フナバシストーリー」を見て感銘を受けた飯山満中学校美術教諭・大浜美樹さんが「自分の身近な場所を見つめ直す写真の授業を」と2021年に始めたもので、子どもたちが切り取った「今」が収められている。
益子さんは「当時の人々の暮らしがありのままに表現されている。自分たちが当たり前のように見てきた風景が、約40年を経て懐かしく楽しめる。自分のエピソードを投影できるので、ぜひ見に来てほしい」と呼びかける。
開催時間は10時~17時(金曜は19時まで)。入場無料。12月24日まで。展示最終日の24日14時から、北井さんも参加して「フナバシストーリー座談会」も開催。参加自由。