船橋市の西習志野バラ公園（船橋市西習志野1）に植えられている、近所では「ワタナベ桜」として知られるシダレザクラが見頃を迎えた。

渡邉アキ子さんと三沢さん夫婦（関連画像）

　この桜は、30年ほど前から近隣に住んでいる渡辺信義さん、アキ子さん夫婦が植えたもの。ソメイヨシノと比べると、濃いピンクの花が木からぶら下がるように咲く姿が特徴的だ。

　市内の大手ガラス工場に勤務していた信義さんが30年ほど前に突然思い立ち、アキ子さんと一緒に庭の木をバラ公園に運び込み植樹した。植えた当時は、幹回りが約30センチ、高さは3メートルほどだったという。約10年後、桜が根付いたのを確認できたからか、安心したかのように信義さんはこの世を去った。

　植樹した際に市の許可を得ていなかったため、行政の中には伐採して撤去しようという動きもあったが、近隣住民の「せっかくきれいに咲いている桜を切らないで。住民はみんな楽しみにしている」と猛反対。非公認ながらも市民権を得た桜は現在、樹高15メートルを超えるほどに育ち、幹回りも1メートル近くまで育っている。

　アキ子さんは信義さん亡き後、近所の友人に幾度となく、信義さんと一緒に桜を植樹した話を披露した。近所に住む三沢さん夫婦は「家がすぐ目の前だから桜が咲く日を待ち望んでいる」と、毎年楽しみにしているという。

　アキ子さんは「あなたが残してくれた桜のおかげで、みんなが幸せな気分で春を迎えられる。良いことをしたね」との濃い花びらを眺めながら信義さんとの思い出に浸る。