東武アーバンパークラインの馬込沢駅前にハンドドリップコーヒーを売りにした「magome coffee project」(船橋市馬込西1、TEL 050-5586-4111)がオープンして約3カ月たった。
昨年12月30日にオープンした同店は、週2日だけの限定営業と、「分かりにくい立地」でSNSを中心に話題を呼んでいる。オープンしたのは、福嶋勘太朗さん(35)。本業はIT関連会社の取締役で、会社員の傍ら長年の夢だったカフェ経営を開始した。店舗面積は6.5坪。座席8席で、内装は全て勘太朗さんが手掛けた。店の看板は外に出ていない。
メニューは、エスプレッソ(300円)、カプチーノ(450円)、カフェ・ラテ(450円)、ハンドドリップコーヒー(450円)など。子連れ客に向けてオレンジ・リンゴ・ブドウジュース(各250円)も用意する。フード類は提供しないため、持ち込みも可能。店内に焙煎(ばいせん)機もあり、フレグランステイスティング」も行っている。
「開店資金は150万円。カフェを開店するのに1,000万円必要と本に載っていることもあるが、ミニマムでもここまでできるという見本にしたかった」と話す。
滋賀県出身の福嶋さんは、21歳で単身イタリアのレストランへウエーター修業に出掛ける。イタリア人シェフに「君のいれるコーヒーはまずい」と言われたのをきっかけに、職場の仲間にコーヒーのいれ方を習ったところからコーヒーに本格的に携わるようになった。
「一日に5~6杯は飲む。朝ごはんの代わりにエスプレッソを飲むくらいコーヒーが生活に溶け込んでいる」と、イタリアのコーヒー文化について話す。一人前のコーヒーをいれられるようになりたいと、著名なバリスタ野崎晴弘さんが主宰する育成スクールに1期生として通った。
25歳になるころには「イタリアのバールみたいな店を持ちたい」と考えたというが、コーヒーだけで採算を取る難しさに気付き、店舗運営を総合的に見られるようになるため、サービススタッフ紹介サービス「配ぜん人紹介所」に登録。100カ所を超える街場のレストランでウエーターとして働き、開店資金を稼ぐために昼間はIT企業で営業の仕事を、夜には並行してソムリエ取得のためにバーでの仕事もこなし夢中で働いたという。
24歳のころにはその経験を武器に、イタリアで200年続くチョコレートの老舗「COVA」にイタリア語で自分をプレゼンテーション。「COVA TOKYO」のオープニングバリスタとしてオープンに立ち会った。
その後、店舗運営と料理を学ぶために転職したイタリア料理店が買収、閉店という憂き目に遭ったが、何とかIT企業に職を得て大手通信系企業へ派遣される。期間満了後には都内の大きな行政書士事務所に営業部長として勤務するなど高待遇の会社員として安定を手に入れた。
しかし、成長していく自身の子どもを見ながら「子どもにやりたいことをやらせてあげたいと思うけど、自分はどうなんだろう」と、悶々(もんもん)とする日々を過ごすように。起業して活躍する友人からアドバイスを受け、「コーヒーを仕事にしたい」と、20代に夢見たコーヒーのある生活に向けてかじを切った。
3人目が生まれたばかりのタイミングで会社を辞め、1カ月半かけてイタリア、イギリス、デンマーク、ノルウェー、オランダと各国のカフェを見て回った。「いろいろ見てきたが今すぐにカフェだけで生活を成り立たせることはできない」と、縁のあったIT企業に就職。土日の休みを利用して自宅から近い馬込沢に「magome coffee project」を開店した。
ハンドドリップとエスプレッソマシンだけで勝負したい気持ちもあったが、コーヒー豆の焙煎も行う。2月の営業売り上げは6日間で15万円。「仕入れが高いので利益はほんの少し。本業のSNSなどを使ったウェブマーケティングの知識を生かして集客も頑張る」と話す。
営業時間は11時~18時30分。土曜・日曜のみ営業。