船橋市北部の牧場「皆川牧場」(船橋市鈴身町)が昨年8月、乳用牛の牧場では県内初となる農場HACCP認証農場となってから1年が経過した。
農場HACCPとは、適切な管理・飼育を行い、畜産農場における危機要因分析、必須管理点の考え方を採り入れた飼養衛生管理のこと。農林水産省などが導入を推進している。同牧場は2013年に農場HACCP推進農場の指定を受け、その後、書類の作成や管理の見直しなどを経て、2016年8月に認証農場の承認を受けた。酪農における農場HACCP認証農場は全国的にもまだ少なく、千葉県内では初の事例となった。
同農場では現在、主に生乳を八千代酪農農業協同組合に出荷しているが、同牧場3代目代表の皆川香理さん(48)が「いつかチーズを作って販売などもしてみたい。認証取得で付加価値が付けられるのでは」という将来像からHACCP取得に取り組んだ。
「HACCP取得に向け、どうしたら従業員の誰もが事故なく作業をできるのかをベースに、体制や管理方法などを徹底的に見直した。従業員全員で話し合う場を作るようになったのは、大きな変化だった」と皆川さん。従業員は現在3人、うち2人はタイからの研修生。言葉の問題もあり、作業手順などの張り紙はタイ語を併記し、写真付きにした結果、共通理解が進み事故もなくなったという。HACCPへの取り組みで最初に購入したスタッフミーティング用のプレハブルームも重要な役割を果たしているという。
皆川さんは酪農学園大学を卒業後、1年間のデンマーク研修を経て父が営んでいた同牧場に就農。「デンマークで目にした酪農は、実家やほかで見て来たものとはあまりにも違って、衝撃的だった。この方法なら私ふも日本で酪農を続けたい、この方法を日本で実現させたいと思って帰国した」と当時を振り返る。
帰国当時に就農した実家の牧場は、鎌ケ谷市内で1952(昭和27)年から続く老舗だった。しかし皆川さんの描く新牧場実現にはスペースが狭かったため、1993年、現在の場所に牛舎を移転。現在は約140頭の牛を所有し、牛が自由に歩いて生活できる「フリーストール方式」の牛舎を2棟と、一度に12頭の搾乳をできる「ミルキングパーラー」を所有する。牛は全頭、歩数計付きのICタグで管理し、搾乳時にコンピューターを通してその日の牛の歩行数、乳量などを全て数値化している。
皆川さんは「数字でデータが出てくるが、事前の登録処理の間違いが起きる可能性もあり、やはり人間の目が大切な部分も多い。さまざまな面で複数の人が2重、3重でチェックできるようにしている」と話す。