船橋市漁業協同組合が6月22日、壊滅に瀕していた船橋のアサリが「砕石覆砂事業」により自然繁殖に成功したことを報告した。
砕石覆砂事業とは、細かい砂利を海にまいて海底を覆い、アサリの繁殖を補助する事業。船橋三番瀬のアサリ漁は1950年代後半~1975(昭和50)年には漁獲高が年間1万トンを超えることが多かったというが、青潮の影響で次第に漁獲高は減少。2006(平成18)年以降は激減し、ここ10年間の漁獲高はゼロに等しかった。
千葉県水産総合研究センター東京湾漁業研究所(富津市)元所長で、同事業の技術顧問を務め、40年にわたり東京湾の漁業とアサリの研究を続けている柿野純さんは「アサリの漁獲高の激減の原因の一つには、のり漁の激減が影響している。アサリは波に流されやすく、のり養殖の支柱柵が、波で稚貝が流されるのを防いでいた」と話す。
2011(平成23)年の東日本大震災では三番瀬にも津波が発生し、海底の40~50センチの砂が流され水深が深くなったことで、波が大きくなりアサリも流されてしまったという。
アサリの繁殖を促すため、2017(平成29)年から2020年まで、千葉県、船橋市と漁業協同組合、専門家らで組織する「船橋市漁協活動グループ」が水産庁「水産多面的機能発揮対策事業」(国・県・市が一体となり漁業者などの活動を支援)からの交付金を利用し、三番瀬の漁場4カ所に砕石覆砂区の造成を試験的に行った。
船橋市経済部農水産課の梅田新也さんは「小さいアサリがたまりやすいように2~5ミリの砕石で海底を覆う。4年間で7400平方メートル、厚さは5~10センチになる。今年になって、アサリが成貝に育った。長期的に見て結果が出れば」と話す。
貝漁師・小野尾祐司さんが砕石覆砂地区でアサリ漁を披露。鋤簾(じょれん)で引き上げると東京湾のアサリ特有の白黒模様の「パンダアサリ」や青みがかった「三番瀬ブルー」と呼ばれるアサリが採れた。小野尾さんは「砕石をもっと広い範囲でまいてもらいたい」と同事業に期待する。
柿野さんは「砕石覆砂は伊勢湾、有明海などで行われているが、かつては壊滅的だった天然のアサリが成貝まで成長したのは東京湾ではふなばし三番瀬が初めて。現在アサリは砕石覆砂を施した場所にしか生息していない。今後の漁場の改善や規模の拡大を検討している」と抱負を明かす。
アサリの採集は試験的に毎週土曜に行い、「三番瀬みなとや」(日の出1)で土曜・日曜のみ10時~15時、1グラム1円で販売する。シケなど海の状況により入荷が無いこともある。「砂抜きのようにして砕石を吐かせてから食べてほしい」と梅田さん。