船橋商工会議所青年部の事業ユニット「ビジネス交流委員会」主催の特別講演会「一緒に探そう!!向こう側にある新しい形」が9月15日、船橋市民文化ホール(船橋市本町2)で300人以上を集めて行われた。
講師を務めたのは、2021年から菅政権で内閣官房参与の岸博幸さん。「アフターコロナ」の経済成長に対し政治家や財界人に警鐘を鳴らし、2019年までの日本はデフレ経済で不景気だったことを挙げ、2019年までの25年間、経済成長指標とされる「名目GDP」で日本が3%だったのに対し、米国経済は300%、中国経済においては2500%超だったと紹介。
「世界の覇権を狙うアメリカと中国は仕方がない。『ヨーロッパと比較したらどうか』と言われることが多い」として、フランスの名目GDPが同期間に成長率2倍(200%)、イギリスでは2.2倍(220%)というデータを添え「日本は25年間負け組だった」と伝える。
その原因として、「デフレ経済が続いたから」に対しては、「金融経済の問題なので実質経済には関係がない」と回答。「人口減の高齢化社会だから仕方がない」には「そもそもの経済生産性が低いことが問題」と一蹴する。
政治家や大企業のトップたちに代表されるこの国のリーダーが脆弱だと指摘。「デジタル化を置き去りにしたことでイノベーションを起こせない国になった。原因はリスクある決断をしてこなかったこと」と話す。
「イノベーションとは全く新しい価値を生み出すことではなく、現在ある価値と価値を新しい組み合わせで創り出すこと」と100年前の経済学者シュンペーターの理論を例に挙げ、現場の大切さについて熱く語る。「日本はリーダーや指揮官が良いからここまで成長してきたのではなく、最前線にいる非エリート(現場の人)の力が強いから経済大国までのし上がってきた」と言葉に力を込める。
その証拠として、医療の最前線で働く人たちの水際の頑張りや、コロナ禍における政府からの「自粛要請」だけで、感染拡大を世界のどの大国よりも抑え込んでいることなどを挙げた。
コロナは価値観や意識を変えるためのきっかけとして、「人が今までにない新しい体験をしたことで新しいサービスが生まれるチャンス」との考え方やものの見方について示唆。
「船橋は東京から近い立地。例えば『日本一住みやすい街を作る』などのテーマでもっと変われるはず。今こそリスクをとって改革してほしい。中途半端な改革ではなく、最後までやり切ってほしい。コロナで昭和的なやり方を見直すタイミングが来た。世代交代して若い人が意思決定できる社会を経験豊富な年長者がサポートする仕組みが望まれている」と結んだ。
会場は、空間洗浄、除菌を実施。来場者は検温と手指の消毒、マスクの着用を義務付けするなど、「考えうる限り」(主催者)の感染症対策で臨んだという。