船橋地域福祉・介護・医療推進機構主催の「災害トリアージ講習会」が3月28日、板倉病院(船橋市本町2)で行われ同院の職員約50人が参加した。
講師を務めたのは、船橋市立医療センター 救命救急センター(金杉1)の医師・水嶋知也さん。新型コロナウイルス感染症の対策も加味し、会場内の換気、マスク着用、アルコール消毒の徹底など医療従事者・病院として最大の配慮を行った上で実施した。
患者の重症度に基づいて、治療の優先度を決定して選別を行う「トリアージ」。講習会は2回目になり、昨年3月に1回目を開催している。同院では日頃から緊急時には病院関係者でトリアージができるように訓練をしている。
「医療における災害」について水嶋さんは「医療サービスを求める疾病者数が、提供する側の診療能力や資源を上回る状態」と説明。通常時の医療では診療能力や資源が十分足りている状態が、災害時では爆発的に傷病者数が増加し、迅速な応援や補充があれば均衡を保てるが、災害時には医療従事者も被災者に成り得る状態なので、傷病者数が大きく膨れ上がる状態が予想される。
限られた資源を有効かつ無駄なく活用し、最大多数の傷病者に最善を尽くすためにも、全ての傷病者の緊急度や重症度を評価し、診療の優先順位を決めるトリアージの必要がある。
自力歩行ができるか否か、呼吸はしているか否か、橈骨(とうこつ)動脈の触知の有無、意識の有無で振り分けていく。トリアージタグにはその振り分けによって、緑・赤・黄・黒の色分けでどの状態にあるのかがすぐ分かるようになっている。
実際に2人1組になってトリアージの実習が始まると、制限時間2分で、症状が書かれたカードを基に1人がタグに記載、1人がその症状からトリアージを行っていった。
水嶋さんは「災害時情報としてタグを正しく付けることが大事」と伝え、そのためにも「きちんと読める字で書くように」「空欄があっては成り立たないのでしっかりと記入を」「記載ミスがあっては成り立たない」と、災害時における情報は大きな意味があることを繰り返し強調しながら、指導に当たっていた。
板倉病院の院長梶原崇弘さんは「日本医師会でもJMAT(日本医師会災害医療チーム)などの取り組みが進み、東京都でも病院前に救護所を設置しようという動きがある。船橋市もその流れから取り残されないよう、応急救護所を市内55カ所の小学校などに設置するというルールに変えていきたい」と提言し、「4月1日から、有事の際には市内9カ所の病院で、病院前トリアージを行う」と話した。
「トリアージは、事故・災害であってもウイルス感染のパンデミックであってもベースには共通するものがある。新型コロナの感染者が増えつつあるこのタイミングで行う意義が高い」と、講習会の視察に訪れた船橋市医師会執行部の医師。