紙すきや機織りなど芸術作品を生み出す福祉作業所を展開する社会福祉法人の地蔵会が3月28日、新たな作業所「アトリエ空と海」(船橋市神保町)の竣工(しゅんこう)式を行った。
障がいを持った人たちが天然木の切り株で作成したフォトフレームや額縁(関連画像)
設立は18年前。「障がいを持った人たちの持つ可能性を、紙すきを通じて伸ばしたい」と現在施設長で書家の奥野満さんが開設。理事長で画家の大野待子さんとの二人三脚でアパートの一室から育ててきた法人で、設立3年目の年から全国各地の百貨店やデパートで作品の販売を行ってきた。
この日竣工式を迎えた「アトリエ空と海」は、敷地面積330坪、建物100坪の多機能型障害福祉サービス事業所。建物は、すべてバリアフリー設計でアトリエ(工房)と福祉ショップが併設されている。背面に豊かな緑をたたえた林を持ち、道路を挟んだ正面には梅の花が咲き誇る畑を迎える立地。定員は25人、同作業所の完成で法人全体では43人の定員になった。
併設のショップには織物、紙すき、木工細工などの作品が展示されており、広く取った窓は自然の採光が豊かなつくりになっている。
ショップ側から工房の様子をガラス越しに見ることができるように設計。「ショップを訪れた人が障がいを持った人たちの作業の様子を見ることで理解を深め、交流の場になってくれたら」と奥野さん。法人開設以来、何度も夢に見てきたという施設の完成に顔をほころばせた。将来的には障がいを持つ人と健常者とのワークショップなども計画しているという。
竣工式には、松戸徹船橋市長をはじめとした来賓や市内の障害福祉作業所関係者ら約50人が駆け付け作業所の完成を祝った。
来賓と参加者を前にあいさつを行った奥野さんは「障がいを持った人たちは新しい分野を切り開く可能性を持っていると信じて、夢を持ってまい進してきた」と18年間を振り返り、涙をこぼした。
来賓祝辞で松戸市長は18年前の同法人開設当時、秘書課配属だったことを語り、奥野さんの「子どもたちの可能性を伸ばしたい」という熱い思いのこもった言葉を昨日のことのように覚えていると祝辞を贈った。