
船橋本町通りにある1872(明治5)年創業の「森田呉服店」(船橋市本町4)が3月7日、153年の長い歴史に幕を閉じた。
森田呉服店は、同所の隣にもともと本家があり、江戸時代の終わり頃に分家して、現在の場所に開店したという。5代目店主の森田雅巳さんは「戦争も空襲も、関東大震災も、東日本大震災も乗り越えて続けてきたが、雨漏りがひどくなり、屋根の補修、耐震も必要になってきた。心苦しい決断だったが、今回、閉店することになった」と話す。
同店は呉服店として営業していたが、時代に合わせて扱う商品を変え、約12年前に店内をリニューアル。その後は、手ぬぐいや久留米絣(がすり)で作った布小物、作務衣(さむえ)などをメインに販売していた。船橋の町名が書かれたご当地手ぬぐいやユニークな柄の手ぬぐいは、幅広い世代から人気だったという。
閉店することが知られてからは、SNSなどで歴史的な建物がなくなることを知り、最後に一目見ようと来店する人や、長年付き合いのある人が別れを惜しんで来店するなど、毎日多くの人が訪れていたという。
たまたま立ち寄ったという女性は「今日で終わりとはびっくりした。最後に記念に手ぬぐいを買いたい。この建物は本町のシンボル的な存在だったのに残念」と話していた。
営業は終了したが店舗はしばらく残り、7月末ごろから工事が始まる予定だという。船橋市本町通り商店街振興組合の理事長も務める森田さんは「店はなくなるが、商店会の活動は継続して地域を盛り上げたい。明るい閉店」と話し、「これまで長い間やってこられたのは皆さんのおかげ。心から感謝している」と話す。