船橋昭和浄苑(船橋市大神保)霊園内にある、ポストとお墓一体型の「&(安堵・あんど)」が完成して約2年を迎え、手紙を使った新しいお参りのスタイルとして注目を浴びている。
「手紙寺」とも呼ばれている同園は、證大寺(しょうだいじ)によって運営され、僧侶が常勤している。開園当時から行っている取り組みの一つが「手紙参り」。故人宛てに手紙を書くことで自分の気持ちを整理したり、遠方に住んでいてなかなか墓参りに来ることができない親族が利用したりしていたもので、同園宛てに送られてきた手紙は、毎月1回おたき上げをしているという。
2017年には手紙を書くための専用ラウンジ「手紙処(どころ)」をオープンし、「手紙寺郵便」として園内に4つの専用ポストも設置し、墓参りの際、直接手紙を投函できるようにした。
同時期に完成した永代供養墓「&(安堵)」は高さ約120センチ、直径約30センチの白い大理石の円柱形で、夫婦はもちろんのこと、友人や恋人など埋葬者の間柄や国籍、宗教も一切問わない自由な墓となる。
形状は、直接手紙を投函(とうかん)できるポストと一体になったタイプにすることもでき、遺骨は地中ではなく墓碑の上部に収蔵され、故人を抱きしめるような感覚でお墓参りできるのが特徴。浄苑長の溝邊さんは「お墓の価値観も変わりつつあり、契約される方の理由もさまざま。そんな人たちに寄り添うものを作りたかった」と話す。
2018年からは、契約時にパートナーに向けた手紙や思い出の品を入れておくことのできる「手紙箱」もスタートした。手紙箱は手紙寺が預かり、どちらかが亡くなった際に受取人へ渡すシステムになっている。
故人から届く手紙箱は、住職の井上城治さんの実体験が元になっているという。井上さんが、寺の運営で行き詰まり不安な思いにかられていた際、前住職だった父親から「あなた宛てに書いた出紙があるから、私が死んだ後に開いてみなさい」と言われた言葉を思い出し、本堂の屋根裏で手紙を見つけた。その手紙には「後継に告ぐ 證大寺の念仏の法灯を絶やすな」というメッセージが書かれていた。「父がまるで今の自分に充てて手紙を記してくれているように感じ、言葉が染み渡るようだった」と、井上さん。
副浄苑長の船木さんは「寂しいとき、どちらへ進んでいいか分からないときに、手紙を通して故人と向き合い語り合うことで自分自身の気持ちも見えてくる。生と死を超えた郵便で、いつでも故人を思うお参りの心を大事にしてほしい」と話す。