国の文化審議会が6月18日、「取掛(とりかけ)西貝塚」(船橋市飯山満町)を国史跡に指定するよう萩生田光一文部科学大臣に答申した。
船橋市が1999(平成11)年から調査を続けてきた同貝塚は、飯山満町から米ヶ崎町の台地に位置する約縄文時代早期前半(1万年前)の遺跡で、全体面積は約7万6000平方メートル。国史跡の指定を受けたのは、うち約3万9000平方メートルの地域。
船橋市教育委員会によると、取掛西貝塚は、東京湾東岸部最古の貝塚であり、集落と貝塚の関係が分かる貴重な遺跡という。地域で貝塚が形成される状況や環境、人々の生活・文化、社会を具体的に解明することができる、全国的にみて重要な遺跡であることが20年以上に渡る発掘調査を通して分かり、今回、史跡名勝天然記念物の新指定12件のうちの1件になった。
船橋市教育委員会の松本文化(あやか)教育長は「取掛西貝塚は、人々が急激な環境変動に適応し、海の幸を利用しはじめた様子を教えてくれる、まさに人と海との関わりのルーツとなる遺跡であり、東京湾の恵みにより人々が集まり、発展してきた『ふるさと船橋』の原点といえる。今後、市民のみなさんとともに、未来を担う子どもたちへ、先人が残した文化遺産を大切に伝えていきたいと思っている」と話す。
国史跡の指定を受けると、同地域の開発工事などから史跡を守ることが可能となる。同地は史跡を地下に残した状態での農地と住宅地であるため、現地では営農、住宅には住み続けることができ、その後の整備に当たっては、地権者の意向を十分に確認しながら保存活用計画が進められていくという。
今回指定を受けた約3万9000平方メートルのうち、船橋市市有地は約7654平方メートル。約3万1377平方メートルは民有地となっている。市の担当者は「この場所が約1万年前から開発工事などで破壊されることなくこの状態を保(たも)てたのは奇跡的なこと」と話す。
飛ノ台史跡公園博物館(海神4)では現在、同史跡の普及活動の一環として「いよいよ国史跡指定へ 取掛西貝塚ミニ展示」を行っている。8月14日は船橋市勤労市民センター(本町4)ホールで講演会「取掛西貝塚を考える~約1万年前の縄文ワールド第4弾~」を行う予定。
飛ノ台史跡公園博物館学芸員の畑山智史さんは「船橋は歴史があり古いものがたくさんある。船橋初の国史跡指定をきっかけに改めて郷土の歴史を見返していただけたら」と話す。
飛ノ台史跡公園博物館の取掛西貝塚ミニ展示スペースでは、同貝塚から移設された実物の貝層を展示するほか、掘り出されたヤマトシジミなどの貝殻展示、出土した土器をつなぎ合わせて復元した土器展示などを行っている。7月11日まで。