船橋市が新たな名産としてPRに力を入れる魚「コノシロ」を題材にした絵本「コノシロさんちのハルちゃん」の寄贈式が5月12日、船橋市役所で行われ、一般社団法人「伝統江戸前漁業を未来につなぐ会」が制作した絵本300冊を市に寄贈した。
同書は、「子どもたちが地元で捕れる魚を知り、三番瀬の漁業を未来につなぐきっかけになれば」との思いから同会が制作した。今年3月~4月にクラウドファンディング(CF)で協力を呼びかけた結果、241万2,000円の支援金が集まった。
原案は同会代表理事の大野和彦さんが手がけ、文と絵は船橋市在住のイラストレーター・小倉正巳さんが担当。三番瀬で暮らしていたコノシロの「ハルちゃん」が、漁師に捕らえられて家族と離れながらも、さまざまな困難を乗り越えて成長していく姿を24ページ構成で描いている。
市内で45年間漁業を営む大野さんは、コノシロの活用に取り組む第一人者。ニシン科の魚・コノシロは、シンコ、コハダ、ナカズミ、コノシロと成長に応じて呼び名が変わる出世魚として知られる。一方、大きくなるにつれて身が固くなり小骨も増えることから需要が落ち、市場では流通量が少ない「逆出世魚」とも呼ばれる。船橋市が全国有数の水揚げ量を誇ることから、大野さんは約4年前からコノシロの活用や認知度向上に向けた活動を続けている。
東武百貨店船橋店の階段壁画を手がけるなど、地域に根差した創作活動でも知られるイラストレーター小倉さんと大野さんは旧知の仲。大野さんは「絵本を制作するに当たり、僕自身が小さい頃、海の中には竜宮城があるのではと想像を膨らませていたことを思い出した。そういう絵が描けるのは小倉さんしかいないと思い、今回イラストをお願いした」と話す。
小倉さんは「光栄な話だったが、少しプレッシャーもあった。海の中の話なので全体的に青を基調としながら、海藻などで色味を加えた。小さな子どもたちにもハルちゃんに親しんでもらえるようなデザインに仕上げた」と言う。
大野さんは「東京湾に生かされてきた私たち。江戸前の漁業を次の世代に伝えるためにこの絵本を作った。プラスチックごみ問題や海水温の上昇といった環境問題にも触れながら、ハルちゃんのように自分らしくたくましく生きてほしいというメッセージも込めている。すてきな本に仕上がってうれしい」と笑顔を見せる。
絵本を受け取った松戸徹市長は「船橋の大事な海を、絵本を通じて子どもたちに感じてもらいたい。学校給食で食べているコノシロも、味わい方が変わるのでは」と期待を寄せる。
寄贈された絵本は、市内の保育園、幼稚園、小学校、図書館などに配布する。