「少しでも廃棄処分を減らしたい」と市民間のSNSから立ち上がった「船橋のなし豊水レスキュー」チームのメンバーが現在、「蜜症」被害の梨を商品化し販売している。
今年7月、JAから「豊水に特有の症状『蜜症』が例年より多く発生する見込み」との通知があったことを知った市内飲食店店主や料理教室運営の主婦らが結成した同チーム。農家から「蜜症」梨を購入し、加工に回す仕組みを作った。
蜜症は豊水梨に発症が多く、天候不順などで果実内の糖分が偏って透明化、梨特有のシャリシャリとした食感が減少し、さらに収穫から数日で茶色に変色していく症状。食用として問題はないとされているが「腐食が進んでいる」と勘違いされギフト需要などでの出荷が難しく、かねて梨農家は頭を悩ませてきた。
ここ数年は特に天候不順の影響を大きく受け、農家によっては豊水収穫の5割程度で蜜症が出たため出荷を断念、大量の廃棄処分をしてきた過去もある。
活動は今年の豊水収穫が始まった8月中旬に動き出した。店頭での販売や飲食店でメニュー化し、継続的に来店客に提供できる仕組みを整えてきた。「加工に回すことで蜜症の梨も賞味期限を延ばすことができる。食感が弱いという特徴もジャムやコンポートなどにすると解決できる」と同チームのメンバー。
最初に商品化に踏み出した「カフェVINE&SHRUB」(船橋市高根台3)を営むリツコさんは「蜜症の梨について初めて知り、役に立ちたいと思いチームに加わった。廃棄削減に寄与すると共に、蜜症や農家の現状を紹介することができ、お客さまにも喜んでもらえてうれしい」と話す。
「アーノルドフジタカムラ」(芝山3)では、蜜症の梨を8キロ購入し、ジャムとコンポートに加工。看板商品のメロンパンに挟んだ「梨ジャムたっぷりクリームメロンパン」(270円)や煮込んだ梨をデニッシュにのせて焼き上げた「梨のデニッシュ」(230円)の新メニューの販売を始めた。
「フレンド」が営む「キッチンカー『とことこ』」(習志野台2)では、冷凍の梨をふんだんに使った「梨のソーダ」を販売。店主の森雅美さんは、「地域の困りごとに少しでも役立ちたい」との思いから、プロジェクトに参加。蜜症の梨10キロを購入して商品化した。「梨のソーダ」は、豊水を細かくブロック状に凍らせて使用。1杯のドリンクに2分の1個分の果肉を使っているという。「店のインスタグラムやフェイスブックなどの投稿を見て朝から多くの方が梨のソーダを楽しんでいる」と同店スタッフは話す。